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競合他社との勉強会はカルテルに該当しうるのか

競合他社との勉強会とカルテル

Q: 市場の情報を収集して自社の事業戦略に生かすために、競合他社の集まる勉強会に参加したいと考えています。業界団体の会合に参加するとカルテルの疑いをもたれる可能性があると聞いたことがありますが、勉強会であれば問題ないでしょうか。

A: 勉強会であっても、その場でやり取りされる情報の内容が、商品の価格や販売方法などに関するものである場合には、独占禁止法上の禁止対象となるカルテルに該当する可能性があります。競合他社との情報交換の内容には細心の注意を払いつつ、問題視されないような情報交換に努めるべきです。

1 競合他社との情報交換と独禁法上の問題

(1)独禁法上の禁止対象となる「カルテル」とは

 独占禁止法(以下「独禁法」といいます)によって禁止されている「不当な取引制限」の一つとして、「カルテル」があります。

 「カルテル」とは、事業者等が相互に連絡を取り合い、本来は各事業者が自主的に判断して決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為をいいます。このような行為によって、一定の市場における競争を実質的に制限する場合は、「不当な取引制限」に該当し、独禁法による制裁の対象となり得ます。

(2)独禁法に違反した場合の制裁内容

 独禁法上の「不当な取引制限」であるカルテルに該当した場合、公正取引委員会は、カルテル行為に及んだ事業者に対し、当該行為を排除するために必要な措置(排除措置命令)及び課徴金の納付(課徴金納付命令)を命ずることができます。

 また、刑事罰として、行為者本人には5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科され、その雇用主である当該事業者には5億円以下の罰金が科されることがあります。

(3)競合他社との情報交換に伴うリスク

 設例のように、競合他社の事業者間での勉強会や研修会等の会合に参加した場合、それだけで直ちにカルテルに該当するわけではありません。しかし、その場でなされた情報交換の内容如何によっては、カルテルの疑いを生じさせかねないため、競合他社との会合においては、問題視されやすいような情報交換を行わないように注意することが必要です。

2 リスクの高い情報交換の内容

 では、独禁法に違反するリスクの高い情報とはどのような内容でしょうか。

 例えば、以下に挙げる情報のように、事業者の現在または将来の事業活動における重要な競争手段に具体的に関係する内容は、独禁法違反になるリスクが高いと考えられます。

 ・販売価格やコストの具体的な計画や見通しに関する情報

 ・販売数量の具体的な計画や見通しに関する情報

 ・顧客との取引や引き合いの具体的な内容に関する情報

 ・予定する設備投資の限度に関する情報

 これに対し、一般的な市場動向や技術動向、経営知識、立法・行政の動向、社会経済情勢等に関する概括的な情報については、相対的にリスクが低いと考えられます。

3 独禁法違反と認定されないための方策

 競合他社等との交流は、有益かつ独禁法上も問題のない情報が得られる場合もあり、市場動向等を調査するうえで必要となることも想定されます。

 そのため、事業主としては、どのような情報交換を行えば独禁法違反になるリスクが高いかを理解しておくことは非常に重要です。業界団体等の会合に参加する場合に、独禁法違反のリスクのある情報交換が行われるのではないかと思ったときは、事前に弁護士等の専門家に相談すべきでしょう。

 未然にカルテルを防止する社内対策としては、研修等の社内教育や社内ルールを整備・運用すること等が考えられます。また、早期に違反行為を発見するための社内対策としては、社員の業務監査や内部通報窓口の設置を行うこと等が考えられます。

 このような方策によって、独禁法等を遵守する組織文化を醸成しておくことが肝要といえます。

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